好酸球性副鼻腔炎

好酸球性副鼻腔炎とは

好酸球性副鼻腔炎は、慢性副鼻腔炎の一種です。

白血球の一種である「好酸球」が鼻や副鼻腔の粘膜に多く集まり、強い炎症を起こすことが特徴です。

通常の副鼻腔炎では、細菌感染や膿が中心となることが多いですが、好酸球性副鼻腔炎ではアレルギーに近い炎症が関係します。

鼻の中に鼻茸と呼ばれるポリープができやすく、鼻づまりや嗅覚障害を起こしやすい難治性の副鼻腔炎です。

近年、好酸球性副鼻腔炎は増加しており、2015年には厚生労働省の指定難病に認定されました。

このような症状はありませんか?

  • においが分かりにくい、または全く分からない
  • 鼻づまりが長く続いている
  • 花粉症の時期が終わっても鼻づまりが治らない
  • 鼻水がのどに流れて、咳が出る
  • 粘り気の強い鼻水が出る
  • 鼻茸があると言われた
  • 喘息がある
  • 痛み止めを飲んで喘息発作が出たことがある
  • 何度も副鼻腔炎を繰り返す

このような症状がある場合、好酸球性副鼻腔炎の可能性があります。

特に、嗅覚障害、鼻茸、喘息を伴う場合には、通常の慢性副鼻腔炎とは異なる治療が必要になることがあります。

好酸球性副鼻腔炎の症状

好酸球性副鼻腔炎では、鼻づまり、粘り気の強い鼻水、後鼻漏、咳、頭痛、顔の重さなどがみられます。
中でも特徴的なのが、嗅覚障害です。
においを感じる嗅裂という場所に炎症や鼻茸が起こりやすいため、においが分かりにくくなります。症状が強い方では、においがほとんど分からなくなることもあります。また、好酸球性副鼻腔炎は喘息を合併しやすい病気です。
鼻の症状が数年続いたあとに喘息を発症する方もいます。咳が長引く、息苦しい、喘息を指摘されたことがある方では、鼻と気管支の両方を確認することが大切です。

好酸球性副鼻腔炎の原因

好酸球性副鼻腔炎の原因は、まだ完全には分かっていません。
ただし、アレルギー体質や喘息、環境因子などが関係し、免疫反応が過剰に働くことで、好酸球が鼻や副鼻腔の粘膜に集まると考えられています。
好酸球による炎症が続くと、鼻の粘膜が腫れ、鼻茸が形成されます。
また、粘り気の強い分泌物がたまり、副鼻腔の換気が悪くなることで、鼻づまりや嗅覚障害が長引きます。
一般的な抗菌薬が効きにくいこともあり、通常の慢性副鼻腔炎とは治療方針が異なります。

好酸球性副鼻腔炎の検査と診断

好酸球性副鼻腔炎の診断では、症状、内視鏡所見、CT検査、血液検査、組織検査などを組み合わせて評価します。

問診

鼻づまり、鼻水、後鼻漏、嗅覚障害、咳、頭痛などの症状を確認します。

いつから症状があるか、どの症状が一番つらいか、喘息やアレルギー性鼻炎があるか、痛み止めで喘息発作が出たことがあるかなども伺います。

鼻内視鏡検査

細い内視鏡で鼻の中を観察します。

鼻茸の有無、粘膜の腫れ、粘り気の強い鼻水、嗅裂への空気の通り道などを確認します。

副鼻腔CT検査

CT検査では、副鼻腔の炎症の広がりを確認します。

好酸球性副鼻腔炎では、両側の副鼻腔に炎症があり、特に篩骨洞という目と目の間の副鼻腔に強い炎症がみられることがあります。

嗅覚検査

においが分かりにくい場合には、嗅覚検査を行います。

嗅覚障害の程度を確認し、治療前後の変化を評価します。

血液検査

血液中の好酸球の割合や、アレルギーの有無を確認します。

好酸球の値は、診断や重症度の判断に役立ちます。

組織検査

鼻茸や病変の一部を採取し、顕微鏡で調べます。

組織の中に好酸球が多く集まっているかを確認することで、好酸球性副鼻腔炎の診断に役立ちます。

下気道の検査

好酸球性副鼻腔炎は喘息を合併しやすいため、咳や息苦しさがある場合には、呼吸機能検査や呼気NO検査などを行うことがあります。

鼻と気管支はつながっているため、鼻だけでなく下気道の状態もあわせて確認することが重要です。

厚生労働省の指定難病について

好酸球性副鼻腔炎は、厚生労働省の指定難病です。
一定の条件を満たして認定されると、医療費助成の対象となる場合があります。
認定には、症状の重症度、手術歴、組織中の好酸球数などが関係します。
申請には、難病指定医が作成する書類が必要です。
すべての好酸球性副鼻腔炎の方が助成対象になるわけではありませんが、中等症以上で治療が長期にわたる場合には、制度の利用を検討します。
当院では対象となる症例には難病申請を行っております。

好酸球性副鼻腔炎の治療

好酸球性副鼻腔炎の治療には、薬物療法、手術療法、生物学的製剤があります。

病状や再発のしやすさ、喘息の有無などに応じて組み合わせて治療します。

薬物療法

治療の基本は、鼻噴霧用ステロイド薬と鼻洗浄です。

鼻の中を清潔に保ち、炎症を抑えることで、症状の安定を目指します。

症状が強い場合には、短期間だけ経口ステロイド薬を使用することがあります。

経口ステロイド薬は効果が出やすい一方で、副作用の問題があるため、長期間の使用は慎重に判断します。一般的な慢性副鼻腔炎で使用されるマクロライド系抗菌薬は、好酸球性副鼻腔炎では効果が十分でないことがあります。

喘息を合併している方では、吸入ステロイド薬を口から吸って鼻から出す「経鼻呼出療法」を行うことがあります。

特に手術後は、副鼻腔の奥まで薬が届きやすくなるため、炎症のコントロールに役立つ場合があります。

■手術療法

茸が大きい場合、嗅覚障害が強い場合、薬物療法だけでは症状が改善しない場合には、内視鏡下鼻副鼻腔手術を検討します。

手術では、鼻茸や炎症を起こした粘膜を取り除き、副鼻腔の出入り口を広げます。

小さな部屋に分かれている副鼻腔を、ひとつの大きな空間に整えることで、換気と排液を改善します。手術の目的は、鼻づまりや嗅覚障害を改善するだけではありません。

術後に鼻洗浄や点鼻薬、吸入ステロイド薬が副鼻腔の奥まで届きやすい状態を作り、再発を抑えやすくすることも大切な目的です。

ただし、好酸球性副鼻腔炎は再発しやすい病気です。

手術後も、鼻洗浄、点鼻薬、外来での処置、必要に応じた薬物治療を継続することが重要です。

生物学的製剤

手術後に鼻茸が再発した場合や、ほかの病気などで手術が難しい場合には、生物学的製剤が選択肢になります。現在日本で使用できる薬剤に、デュピクセントや、ヌーカラ、エキシデンサー、テゼスパイアがあります。

これらの薬剤は、好酸球性炎症に関わるIL-4IL-5IL-13TSLPなどのサイトカインの働きを抑えることで、鼻茸を小さくし、鼻づまりや嗅覚障害の改善を目指す注射薬です。

2週間または4週間に1回の注射で治療を行います。

条件を満たせば、指導を受けたうえでご自宅で自己注射できる場合もあります。

生物学的製剤は、重症の喘息やアトピー性皮膚炎にも使用される薬であり、鼻と気管支の炎症をまとめてコントロールできる可能性があります。

当院では適応となる方に生物学的製剤の導入や継続を行っております。

手術後のケア

好酸球性副鼻腔炎では、手術後のケアがとても重要です。
手術によって副鼻腔を広く開放しても、その後の炎症を放置すると、鼻茸が再発することがあります。
再発を防ぐためには、毎日の鼻洗浄、点鼻薬、必要に応じた内服薬を継続することが大切です。鼻洗浄は、副鼻腔内の分泌物やかさぶたを洗い流し、粘膜を清潔に保つために行います。
術後は、外来で鼻の中を定期的に確認し、かさぶたや分泌物の処置を行います。
術後3か月から半年程度でCT検査を行い、手術の効果や再発の有無を確認することがあります。

術後の通院について

術後しばらくは、鼻の中の状態が変化しやすい時期です。
最初の1か月程度は、比較的短い間隔で通院していただきます。
その後は、鼻の状態に応じて1〜3か月ごとの定期通院を行います。
好酸球性副鼻腔炎は再発しやすいため、症状が落ち着いていても、少なくとも1年間は経過を確認することをおすすめします。
喘息を合併している方では、鼻の治療とあわせて喘息の治療を継続することも大切です。
においが分かりにくくなった、鼻づまりが悪化した、頭痛が増えた、咳が悪化した場合には、再発や炎症の悪化の可能性があるため、早めに受診してください。

好酸球性副鼻腔炎でお困りの方へ
好酸球性副鼻腔炎は、通常の副鼻腔炎よりも治りにくく、再発しやすい病気です。 しかし、適切に診断し、手術、薬物療法、生物学的製剤、術後ケアを組み合わせることで、症状をコントロールできるようになってきています。 「においが分からない」 「鼻茸があると言われた」 「粘り気の強い鼻水が続く」 「喘息があり、副鼻腔炎も悪くなりやすい」 「手術後にまた鼻茸が再発した」 「薬を飲んでも鼻づまりが改善しない」 このような症状がある方は、一度ご相談ください。 内視鏡検査、CT検査、血液検査、嗅覚検査などで病状を確認し、患者さんに合った治療方法をご提案します。