アレルギー性鼻炎の治療は、抗ヒスタミン薬の内服、鼻噴霧用ステロイド、抗ロイコトリエン薬、鼻洗浄などの薬物治療から始めます。多くの方は薬によって症状を抑えることができますが、なかには薬を続けても鼻づまり、鼻水、くしゃみが十分に改善しない方もいます。また、薬をやめるとすぐに症状が戻る、眠気などの副作用で薬を続けにくい、市販の点鼻薬が手放せないという方もいらっしゃいます。
このような重症のアレルギー性鼻炎に対しては、手術治療が選択肢になります。
手術を検討するのは、主に次のような場合です。
アレルギーそのものが完全になくなるわけではありませんが、手術によって鼻の通りを改善し、鼻水やくしゃみを起こしにくくすることを目指します。
アレルギー性鼻炎が長く続くと、下鼻甲介という鼻の中の粘膜が厚く腫れ、空気の通り道が狭くなります。
この状態が続くと、薬を使っても鼻づまりが十分に改善しにくくなります。
粘膜下下鼻甲介骨切除術は、下鼻甲介の表面の粘膜をできるだけ温存しながら、内側にある厚くなった骨や組織を減量する手術です。
下鼻甲介は、鼻の中を流れる空気を加湿・加温する大切な構造です。そのため、下鼻甲介をすべて切除するのではなく、必要な機能を残しながら、腫れすぎた部分を適切な大きさに整えます。
鼻づまりが強い方、下鼻甲介の骨が厚い方、薬や点鼻薬で改善しにくい方に効果が期待できます。
多くの場合、後鼻神経切断術や鼻中隔矯正術と組み合わせて行います。
アレルギー性鼻炎では、鼻の神経が過敏に反応することで、鼻水、くしゃみ、鼻づまりが起こります。
特に下鼻甲介には、鼻水の分泌やくしゃみに関係する神経が多く分布しています。
後鼻神経切断術は、鼻の奥にある後鼻神経を選択的に処理することで、過剰な鼻水、くしゃみ、鼻づまりを改善することを目的とした手術です。
この神経は、においを感じる神経とは異なります。
そのため、後鼻神経を処理することで嗅覚が失われるわけではありません。
当院では、下鼻甲介の腫れが強い方には、粘膜下下鼻甲介骨切除術と後鼻神経切断術を組み合わせて行うことがあります。
鼻の通り道を広げる治療と、鼻水やくしゃみを抑える治療を同時に行うことで、より安定した症状改善を目指します。
アレルギー性鼻炎の方の中には、鼻中隔弯曲症を伴っている方も少なくありません。
鼻中隔が強く曲がっていると、下鼻甲介の腫れを治療しても、鼻の通りが十分に改善しないことがあります。
そのため、鼻中隔弯曲症が鼻づまりに関係している場合には、鼻中隔矯正術を同時に行うことがあります。
鼻中隔を整え、下鼻甲介の腫れを改善することで、鼻全体の空気の通りを良くすることを目指します。
手術後は、鼻の中に止血や傷の保護のための詰め物を入れます。
当院では、鼻洗浄によって少しずつ溶けるタイプの止血材や、翌日または翌々日に短時間で抜去できるスポンジ状の止血材を使用します。
手術後1週間ほどは、鼻づまり、腫れ、少量の出血が続くことがあります。
鼻洗浄を続けていただくことで、血液やかさぶたが洗い流され、少しずつ鼻の中がきれいになっていきます。
多くの場合、2週間から1か月ほどで鼻の通りが改善してきたことを実感しやすくなります。
手術後は、鼻洗浄がとても大切です。
鼻の中の血液、分泌物、かさぶたを洗い流すことで、傷の治りを助け、癒着や感染を予防します。
術後しばらくは、鼻を強くかむこと、激しい運動、飲酒、長時間の入浴、サウナなどは控えていただきます。
また、手術後2週間ほどたった時期に、まれに遅れて出血することがあります。
そのため、術後2週間は旅行、出張、重要な行事、激しい運動などは避けていただくことをおすすめしています。
アレルギー性鼻炎の手術は安全に配慮して行いますが、手術である以上、リスクがゼロではありません。
主なリスクとして、出血、痛み、鼻づまり、かさぶた、感染、癒着、鼻の乾燥感などがあります。
多くは術後の処置や鼻洗浄で改善していきますが、出血が多い場合や痛みが強い場合には、早めにご相談ください。
下鼻甲介は鼻の加湿や加温に関わる大切な構造です。
当院では、粘膜をできるだけ温存する方法を選択し、鼻の乾燥感や違和感を少なくするよう配慮しています。
重症のアレルギー性鼻炎では、薬を続けても症状が十分に改善せず、生活の質が大きく低下することがあります。
「薬を使っても鼻づまりがつらい」
「鼻水やくしゃみが多く、仕事や勉強に集中できない」
「市販の点鼻薬が手放せない」
「薬の副作用で治療を続けにくい」
「夜に鼻がつまって眠りが浅い」
このような症状がある方は、一度ご相談ください。
鼻の中の状態を確認し、薬物治療を続けるべきか、手術治療が適しているかを一緒に考えていきます。